一枚の特選フォト「海 & 船」


One Selected Photo "Oceans & Ships"

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中国初の空母「遼寧」(模型) [中国航海博物館]
[付記: 海洋強国をめざす中国]

画像は上海の「中国航海博物館」に展示される中国初の空母「遼寧」(りょうねい Liaoning) の模型(縮尺1/100)である。 「遼寧」は、元をただせば旧ソ連で建造された「ワリヤーグ」である。 Nikolayev Black Sea Shipyard という造船所 (在ウクライナ) で 建造され、1988年に進水した。時の中国がそれを調達し、2002年3月大連にて改修を施し、そして2012年9月25日に就役した。

艦首部にはスキージャンプ台式の飛行甲板がある。飛行甲板右舷側には髙くそそり立つ艦楼があり、その前後に2基のリフトがある。 空母は2基の蒸気タービン、4基のプロペラシャフト、4基の固定式ピッチプロペラ、2基の舵機を装備する。エンジンの出力は20万馬力。 最高速力は32ノット。航続距離は30ノットで4,000海里である。 20ノットでは12,000海里の航続性をもつ。発電能力は14,000KW。空母用燃料の積載重量は7,800トン、艦載機用ガソリンのそれは5,800トンである。
要目: 全長304m、幅員70.5m、喫水11m、排水量55,000トン、飛行甲板の全長300m、幅員70m。

1996年台湾では総統を選ぶ初めての直接選挙が実施された。時の中国政府は台湾の独立志向をけん制するために近海でミサイル演習を実施した。 だがしかし、米国が台湾海峡に2隻の空母を派遣したために、中国は沈黙を余儀なくされるに至った。中国はこの「台湾海峡危機」 を契機に、空母の保有をめざして真剣に取り組むようになったといわれる。「遼寧」は他国の建造艦を改修したものであるが、2017年4月には 初の国産空母を進水させ、艤装に付してきた。(2018年4月現在も、国産空母艦隊群のさらなる増強をめざして艦船の建造に余念がない。)

    Liaoning
    Type 001 aircraft carrier, PLA Navy's first aircraft carrier, former USSR project 1143.6 Varyag, built in Nikolayev Black Sea Shipyard and launched in 1988. The ship was rebuilt in Dalian Shipyard in March, 2002 and commissioned on 25 Sep. 2012. The carrier is equipped with a ski-jumping flight deck on the bow, 4 tailhooks and 1 barricade. Two lifts are at the front and back of the island superstructure on the right side of the flight deck. The carrier is powered by 4 steam turbines, equipped with 4 shafts, 4 fixed pitch propellers and 2 rudders, which provide 200,000 horsepower. The maximum speed is 32 knots. She can sail 4,000 nautical miles at 30 knots, while 12,000 nautical miles at 20 knots. The electricity system will produce 14,000 KW power. The carrier can store 7,800t fuel and 5,800t aviation gasoline.
    Length 304m; width 70.5m; draft 11m; displacement 55,000t.
    Flight deck, length 300m; width 70m

    A part of the arresting gear of Liaoning
    Arresting gear is mechanical systems used to rapidly decelerate an aircraft as it lands on aircraft carriers. This part of arresting cable was used in the first landing test onto Liaoning on 25th Nov. 2012.
    「遼寧」の停止装置 (arresting gear) とは、艦載戦闘機が空母に着艦する際に、その機体の速力を急速に減じる機械システムである。 同博物館には、2012年11月25日に同空母が最初の着艦テストを行った際に用いられた停止用ケーブル (鋼索) の実物 (一部) が展示されている。

[画像撮影: 2017.4.3-10 中国京杭大運河の旅/2017.4.4 中国航海博物館(China Maritime Museum)にて] [拡大画像: x27711.jpg][拡大画像: x27712.jpg][拡大画像: x27713.jpg][拡大画像: x27714.jpg][拡大画像: x27715.jpg]


    付記/海洋強国をめざす中国

    中国が現在の年率6-7%の経済成長をこのままずっと維持し続けるのであれば、予見される近い将来にはその名目国内総生産は、現代世界の 超大国・米国のそれを凌駕する可能性が極めて高い。経済力の大躍進と相俟って、中国共産党の一党独裁政権の下、 「軍事・安全保障上米国をいずれ凌駕して世界最強の超大国になる」という壮大な夢と野望の実現に向けてひたすら希求するように見える。 海洋領域における中国の「政治・軍事的プレゼンス」、「シー・パワー」、「海洋覇権」や「海洋での支配力、 影響力、優位性」など、これらのいずれのキーワードをもっては論じようが、米国を凌駕するということが現代中国の今世紀における 最大の戦略目標であるに違いない。

    「遼寧」の改修と就航を起点にして、より高性能な国産空母艦隊群の建設、南シナ海での人工島造成と軍事拠点化、 海外港湾施設の権益化、第一および第二列島線水域内における対米国・同盟諸国の接近阻止力をはじめとする軍事的優位性や制海権・制空権の強化、 さらにインド洋・西太平洋海域でのシー・パワーの自在の展開能力の増強を志向するなどのいずれの行動も、その戦略目標の達成のために なす行動のほんの一部に過ぎないであろう。将来太平洋でのシー・パワーの拡張が進めば、大西洋へ、そしてワシントン沖合への展開をも 視野に、中米ニカラグア運河の建設に本腰を入れて取り組むかもしれない。

    今世紀中における中国の国内政治体制の変革の行方をはじめ、米中の覇権 (ヘゲモニー) 争い、政治・軍事・経済的パワーのワールドワイド の競い合いの行方について、世界中の人々が真に注視している。 今世紀は米中の両雄間の覇権をめぐる熾烈な闘いの歴史的転換期を記すことになるのであろうか、パックス・アメリカーナからパックス・ チャイナの世界への転換を見ることになるのか。今まさに時代の証人になるかもしれない大勢のベイビーたちが生まれつつある。  [2018.4.25 記]



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