海洋総合辞典 Comprehensive Ocean Dictionary, 特選フォト・ギャラリーPhoto Gallery, 明石海峡の潮流・大橋bridge and tidal currents, Akashi Strait

一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋


One Selected Photo "Oceans & Ships"

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明石海峡の潮流について [神戸・橋の科学館]

「明石海峡大橋 Akashi Kaikyo Bridge」は本州・明石側と淡路島との間に架かる橋である。橋梁形式は3径間2ヒンジ 補剛トラス構造の長大な吊り橋である。橋上には神戸淡路鳴門自動車道が走る。 着工は1986年 (昭和61年) 4月、供用開始は1998年 (平成10年) 4月で、着工から12年の歳月をかけて完成した。 橋長は約4㎞ (3,911m)。二本の主塔はトラス構造の橋桁 (補剛桁と称される) を吊っているケーブルを支え、その主塔間の長さ (最大中央支間長) は約2km (1,991m) である。 主塔の高さは海面上297mで、これは東京タワー (333m) の高さにかなり近い。

明石側の橋台 (左画像の左端の四角印) のすぐ隣に「橋の科学館」 (Akashi Kiakyo Bridge Exhibition Center) が併設されている。 明石海峡大橋を主体にして、本四連絡橋に関する世界最高水準の架橋技術をパネル、模型、映像などをもって紹介している。 「潮流」画像はその科学館で切り撮ったものである。

架橋における最大の土木工事は、潮流の速い明石海峡の海中に二つの「主塔基礎構造物 (土台)」を建設 することであった。主塔基礎構造物は、主塔をしっかりと固定し、主塔に伝えられる橋桁やケーブルなどの重量を支え、これを地盤へ 伝える役割をもっている。

その構造物を造るためになされた海峡の海底掘削、巨大な綱ケーソンの沈設、その他直径1メートル以上のケーブルの主要目 などについては、下記の「特選フォト」をご覧いただきたい。

海峡でのこの主塔基礎工事に不可欠なのは、海底下の地質学的特性、および海水・風などの流体物の物理学的特性、特に潮の流向 流速に関する詳細・正確な理解である。画像「潮流」は特にその流速について説明している。

明石海峡は幅約4㎞あり、潮の干満によって1日に2回ずつ東西に行き交うという、いわば海水の水平大移動が起こる。 簡単に言えば、月の引力が引き起こす現象として、太平洋側の海水が瀬戸内海へと紀伊水道を経て流れ込み、 またその逆に流れ出る。

海峡で最も速い潮の流れは秒速4.5m (8.75ノット (海里); 1ノット=1海里=1,852m)。 その強さを風速に換算すれば秒速120m以上になり、地上では起こりえない風速レベルになるという。 ドップラー式流向流速計 (Doppler current meter) による潮流観測を主塔基礎建設海域にて行ってきた結果、最大流速は明石側の 主塔基礎で秒速3.5m、淡路島側のそれで秒速4mであったと記されている。画像には強く押し流される浮標が紹介されている。

なお、英国をはじめ日本でも、潮流を利用して発電するための研究開発が進められてきた。明石海峡の最峡部では船舶交通が最も錯綜する ことから、その海域での潮流発電装置の設置には多くの困難が伴うことにならざるを得ない。潮流発電については他の機会に譲りたい。

[2013.4.20.明石・「橋の科学館」にて][拡大画像: x25776.jpg][拡大画像: x25777.jpg: 潮流観測図][拡大画像: x25781.jpg]




[参考] 明石海峡での潮流観測については、ドップラー効果の原理を応用した流向流速計でなされた。そのドップラー効果とは、 音や光などの波動に関して、例えば波源が観測者に近づく (あるいは遠ざかる) 時、観測者から見て波長が短く (長く) 観測される。 従って、周波数が高くなる (低くなる) という現象である。観測者自身が波源に近づく(遠ざかる)時も同じである。 例えば、近づく列車の汽笛の音が高く聞こえるのはこのためである。C.J.Dopplerによって発見された。

* 参照文献: 「大辞典desk - Encyclopedia of Contemporary Knowledge」 (講談社)。
画像はドップラーの原理を応用した流速計による潮流の速さの測定を図化したものである。
[関連サイト] 英国における海洋エネルギー開発の紹介(波力、潮汐・潮流、温度差・OTECなど)[作成中]


[拡大画像: x25778.jpg]


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