海洋総合辞典 Comprehensive Ocean Dictionary, 特選フォト・ギャラリーPhoto Gallery, ブリット川河口風景seascape at the mouth of Brito River, リーバス地峡Rivas Isthmus, ニカラグアNicaragua

一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋


One Selected Photo "Oceans & Ships"

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「ニカラグア運河の旅: リーバス地峡」、太平洋に注ぐブリット川の河口風景
- ブリット川河口横断に挑戦するペットボトル・ボート -

中米ニカラグア国に細長くて大きな湖がある。「ニカラグア湖」である。その湖と太平洋との間にあって、最も狭くなった 辺りがリーバス地峡と呼ばれる地域である [下記地図1参照]。その地峡にブリット川という小さな川があって、太平洋に 注ぎ込んでいる [下記地図2参照]。

ブリット川が注目される大きな理由がある。ニカラグア政府の「大運河検討作業委員会」が、2006年8月に、太平洋と大西洋 (カリブ海)とをつなぐ「ニカラグア両洋間大運河の計画書」 を公表した。報告書はそのニカラグア運河候補ルートとして6つ挙げている。そのいずれのルートにも共通して通過するというのが このリーバス地峡である。そして、地形的観点からして、最も優位性がある地峡ルートとしては、ニカラグア湖に流れ込むラス・ ラッハス川、太平洋に注ぎ込むブリット川、その両河川の間に横たわる、起伏や高低差の少ない分水嶺を結ぶルートである。
[注] 中米地峡に運河を建設するに当たって、特に当時の米国議会ではニカラグア運河案とパナマ運河案とが熾烈に対峙したという 歴史がある。最終的にはパナマ案が選択され建設されるにいたった。

    * "Gran Canal Interoceánico por Nicaragua (GCIN): Perfil del Proyecto", Comisión de Trabajo Gran Canal, Gobierno de Nicaragua
そのブリット川の河口では、1日2回の潮の満ち干によって潮流が引き起こされる。満ち干の頃合いと流れの状態を見ながら、 河口を横切っている若者に出会った。何と、ペットボトルの束2つをタンデム・スタイルに並べ、その間に板を渡したものだ。 その板上に乗っかり、一本の長い棒の両側に板切れを打ち付けただけの手製パドルで漕いでいた。満ち潮による流れの速い タイミングであったが、潮は内海へと流れていたので沖に流される心配はなかった。だが、漕ぎ手は思いのほか緊張ムードを 漂わせていた。やはり転覆を気にしてのことであろう。

[2009.03.01. ニカラグア、リーバス地峡、ブリット川河口にて][拡大画像: x21262.jpg]


中米メキシコからパナマまでの中米諸国を縦貫する国際幹線道路「パンアメリカンハイウェイ」。 ニカラグアの首都マナグアから南東方向(隣国コスタリカ方面)に、そのハイウェイ(国道2号線)を行くと、細長いニカラグア湖としばらく 平行して走ることになる。左手に標高1200mほどのモンバチョ火山 (Mombacho) を通り過ぎる頃、オチョモゴ (Ochomogo) という川に架かる橋 (かつて日本政府の無償援助で架け替えられた) にさしかかる。その橋周辺の村をパソ・レアル・デ・オチョモゴ (Paso Real de Ochomogo) という。橋を渡ってすぐにハイウェイからそれて未舗装道路に入る。エスカランテ(Escalante)を経て、ラス・サリーナス・デ・ ナグアラパ (Las Salinas de Nagualapa) の分岐点にさしかかる。右に行けば、太平洋沿岸の漁村 エル・アスティジェーロ (El Astillero)、ウミガメの繁殖地として有名なチャコセンテ (Chacocente) へとつながる。 左に行けば、未来の「ニカラグア運河」の太平洋側のゲートウェイ付近に位置するブリット (Brito)、およびトーラ (Tola) へとつながる。

今回の旅では、まずエル・アスティジェーロへおもむき、その漁村風景やウミガメ保護の様子を見た。その後、海岸線沿いに南下し、 トーラの手前5kmほどにあるエル・コヨル (El Coyol) という集落で道をそれた。そして、ブリット川のいくつかの川岸地点を 観察しながら、太平洋に注ぎ込む河口へ行き着いた。時期は3月初めで、乾期の真っ最中であったので、エル・コヨルからの悪路を 踏破できた。しかし、これが雨期(5~10月)の間、それも雨が何日か降り続いた後であれば、河口まで行き着くのは極めて困難と思われる。 特にミラマールから河口までは悪路である。 (ランドクルーザーか、牛・馬の引く荷車、農業用トラクターであれば 問題はないが、、、、)。


地図1
エル・アスティジェーロは、ニカラグア湖(右上)に浮かぶヒョウタン形の島「オモテペ島」の真ん中を横断する緯度線上の 太平洋沿岸にある(●印)。 左下の海は太平洋。左上端に首都マナグア(ピンク色)がある。右下のピンク色は隣国のコスタリカである。オメテペ島は淡水湖に 浮かぶ島としては世界最大の島といわれる。 [拡大画像: x24036.jpg]

地図2
画像中央にトーラ (Tola) が見える。その下方にブリット (Brito) の集落(●印)とブリット川がある。その右方に湖畔の集落 ラ・ビルヘン (La Virgen) とラス・ラッハス川 (Las Lajas) が見える。
[拡大画像: x24051.jpg]>その他関連地図[拡大画像: x24037.jpg & z18222.jpg]
出典: El Instituto Nicaragüense de Estudios Territoriales (INETER)発行の25万分の1地図「Mapa de la República de Nicaragua」(2004年)

地図3
特に、北にあるミラマール (Miramar) から、南西端にあるブリット川河口のラ・ボカ (La Boca) までは、雨日が続くとぬかるんで 悪路となる。
[拡大画像: x24079.jpg][拡大画像: x24081.jpg: Miramar & Brito周辺図][拡大画像: x24080.jpg: Miramar周辺図] [拡大画像: x24082.jpg: Brito & La Boca周辺図]
出典: El Instituto Nicarague"nse de Estudios Territoriales (INETER)発行の5万分の1地図「Rivas」(2006年)

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1. ペットボトルを束ねてできたボート、およびパドル。 [拡大画像: x24047.jpg]
2. ブリット川の太平洋への流出口。この狭水道の手前左側に小さな内海(入り江)が広がる。 [拡大画像: x24048.jpg]
3. 画像中央の対岸に見えるのがブリット川である。川は手前に見える入り江(小さな内海、半陸封の水域)にいったん流れ込み、狭水道を経て 太平洋へと流れ出る。 [拡大画像: x24049.jpg]
4. ペットボトルボートで渡河に挑戦する青年。 [拡大画像: x24050.jpg]



辞典内関連サイト
・ 世界の海洋博物館/中米・ニカラグア
・ ニカラグアの海と船のある風景 [2] [2007-2009]
・ 中米ニカラグア運河
・ ニカラグア運河の旅: サン・ファン川、サン・カルロス~エル・カスティージョ  [200902.20-22]
・ ニカラグア運河の旅: エル・カスティージョの博物館


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