世界には一度は訪ねてみたいウォーターフロントが数多あるが、その一つが「アトランティック・カナダ」と呼ばれる
カナダ東部の沿岸諸州である。彼の有名な小説「赤毛のアン」の舞台となり、「世界で最も幸せな島」とも称されるプリンス・エドワード島、
ノバ・スコシア州の州都ハリファックスとそこに所在する「大西洋海洋博物館」が探訪したい目的地である。もう一つの目標は、
ファンディ湾の「ボア」と呼ばれる海嘯(かいしょう)を体感することである。湾奥での潮位差は16メートルにも達するが、湾内では世界
最大級のその潮汐現象を見ることができる。その湾奥に河口があるシュベナカディ川では大西洋からの海水の大遡上・海嘯が起こる。
2020年初めに流行し始めた新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的規模の大流行(パンデミック)後における旅ともなるので、
トロント、キングストン、モントリオールなどの諸都市の海洋関連歴史文化施設などへの探訪や、「セントローレンス川水路(Inland
Waterways)」、「リドー運河」なども是非とも垣間見たい。特にリドー運河をオタワ側から少しでも辿ってみたい。とはいえ、旅は10日
から最大2週間を目途にしたいので、欲張らずに訪問地域・場所をかなり限定することになろう。
今回は大雑把な旅程案を構想することとし、今後情報を収集しながらより具体的で詳細な計画を練り上げることにしたい。
この旅は、画家・イラストレーターである長女の仕事と密接に関係している。旅中スケッチに専念できるように、私が孫娘の世話係を
果たすことになる。それに、ドライバーとしての重要な役目がある。スケッチすることが旅の最大の目的なので、その周遊ルートとして、
スケッチの主たる対象地であるプリンス・エドワード島へは最優先で赴き、そのための時間を最大限に確保することを基本としたい。
モデルルートとしては、成田からカナダ・エアで、カナダでの起点と位置づけるトロントかモントリオールを経由して、そこで
乗り換えエドワード島の最大都市シャーロットタウンへ向かう。経由地はトロントが一般的らしい。最短ルートは羽田~トロント、
または成田からモントリオールへの直行ルートで、そこでシャーロットタウン行きに乗り継ぐことになる。
トロント~シャーロットタウン間のフライトは1日2便運航され、2時間の所要である。エドワード島をじっくりと周回し、感動や
インスピレーションが沸き上った場所でスケッチに専念できるよう、5日間は同島で腰を落ち着けることを想定する。
今回はスケッチに時間を割くことが最重要であり、最優先である。旅の時期としては、夏のバケーションのピーク時を少し
はずすことで、観光地である現地での混雑と一時的物価上昇のタイミングを回避したい。
その後、飛行機でハリファックスへと向かう。私的には「大西洋海洋博物館」を最優先にして見学したい。
その他、英国植民地時代に建てられた「シタデル」という古い要塞をはじめ、「ダルハウジー大学」の海洋学部キャンパスなど、
ハリファックスの街をのんびりと散歩したい。ファンディ湾での海嘯現象をその湾岸沿いの何処で、また湾最奥のシュベナカディ川への大遡上を
何処辺りで観察するのがベストなのか。あるいは、同湾や同河川において、船外機付きゴムボートでの半日か日帰りのツアーに参加し、
ボアを体験するにはどうすればよいのか、今後情報を得て検討したい。子どもの年齢によっては、激浪が渦巻くことになる海嘯の
ボート体験をするにはリスクが伴うので認められないかもしれない。激浪体験がトラウマになって、海・河川や水への恐怖心を
後々まで引きづりかねないので、要注意である。また、14~16メートルの潮位差を観れる漁村にも是非立ち寄りたい。干潮時は
漁船が海底に横たえ、そのうち潮が満ちて来て浮かび上がるというファンディ湾特有の風景が眺められる(1日6時間ごとの潮の
満ち干となる)。いずれにせよ、ファンディ湾周辺での過ごし方やルートについては今後練り上げたいが、最終的には同湾北岸の
港町セント・ジョンへ向かうことになろう。そこで港内での干満差現象や地先での海嘯現象を垣間見ることにしたい。
その後セント・ジョンからオタワに向かうことになろう。フライトを利用できれば時間セーブとなる。リドー運河は首都オタワと、
オンタリオ湖に面する町キングストンとを結ぶ。国会議事堂の傍にリドー運河への入り口があり、そこに8つの連続する閘門(ロック)が
あるので、それをじっくり見学したい。できうれば、運河を数㎞~数十kmクルージングを楽しめる、半日か日帰りの観光ツアーに
参加したい。運河の他方の入り口はオタワから202kmほど辿った先の町キングストンにある。だが、そこまでクルージングする時間
的な余裕は恐らくないであろう。
さて、エドワード島に話しを戻したい。シャ-ロットタウン空港から市内へは公共交通機関はなさそうなので、タクシー利用となろう。
到着ロビーにはタクシー呼び出し電話(無料)があるらしい。州都のランドマークは「セント・ダンスタンス・バシリカ大聖堂」らしい。
4、5日滞在することになる宿泊先については慎重にしっかりと選びたい。ベッド&ブレックファースト(B&B)やホステル
でもよい。トイレ、バスルームは共同でもかまわない。ちょっとした自炊が出来る共用のキッチンと
ダイニングがあるのがベストである。近くのスーパーで食料を買い込み、キッチンで自炊し、サンドウイッチやコーヒーなどを
そのダイニングで飲食できれば申し分がない。軽い作業やくつろくことのできる共用スペース(リビングなど)があればなおよい。
1日は休養を兼ねて街をじっくりと散歩し、観光局にも立ち寄り、エドワード島の雑多の有用情報を得ることを流儀としたい。
レンタカーはネットで事前に小型車を予約しておくのが賢明である(普通、市中で借りるらしいが、営業所は空港にあるらしい)。
プリンス・エドワード島の周回法はシンプルである。主に3つの周回のルートがある。島は東西に横長に広がっている。
まず島の中央部(セントラル)にあって、その中心都市シャーロットタウンとその北側100㎞ほどの距離にあるキャベンディッシュとの間に
広がる田園地帯を大きくぐるっと周遊するルートである。キャベンディッシュとその周辺には、「グリーン・ゲーブルス」
(赤毛のアンの家)、「エドワード島国立公園」、モンゴメリの生家、「グリーン・ゲーブルス博物館」、「ケープトライオン灯台」、
「セントメアリーズローマカトリック教会」などがある。いわば、「赤毛のアン」とその作者モンゴメリとにゆかりのある、いろいろな
見どころが点在している地域である。
ドライブしながら、深い感動やインスピレーションが呼び起こされる風景に遭遇できれば、そこで時間の許す限り
腰を落ち着けスケッチに専念する。翌日に再びそこに戻ってスケッチを続けることもあろう。私と孫は周辺を散歩したり、近郊を
ドライブしたり、あるいは海辺や公園などで戯れたりして豊かな自然を楽しみたい。実に贅沢な話しだと思える。
翌日は島の東部地域を大きく周回するルートを辿る。「イースト・ポイント」、「ケープベア」、「ポイント・プリム」
などの、幾つもの絵になる灯台が続く。「ポイント・プリム灯台」は、1912年に英国豪華客船「タイタニック号」が氷山に衝突し、その後
最初の遭難信号を受信した灯台として知られる。その他、ルート上には国立公園、「オーウェル
コーナー歴史村」、「エルマイラ駅博物館」などの歴史文化施設がある。東部では入り組んだ海岸線沿いにドライブすることに
なる。従って、時間との相談だが、半周か一周か、または大幅なショートカットもありえよう。スケッチのベストサイトがあれば、
腰を落ち着け、時間の許す限り時間を割きたい。当然それなりの食料を十分携帯しておきたい。
翌日は西部地域の田園地帯や海岸線を周遊するルートを辿ることになる。ルート上には博物館や「ノースケープ灯台」、「ウェストポイント灯台」
など見所がありそうで、スケッチポイントに相談しながら、臨機応変に時間をやりくりしたい。その後の2日間は
予備日にあてがい、スケッチを更に続けたいポイントに出戻ったりして、最大限有意義な時間利用を心掛けたい。
私にとっても初めて見る海辺の景色が楽しみである。また、島のあちこちにデザインの異なる灯台が幾つもあり(全部で64灯台)
、これぞという灯台には立ち寄って絵になる風景を切り撮りたい。
「赤毛のアン」の作者について触れてみたい。ルーシー・モード・モンゴメリ(1874-1942年)は、エドワード島に生まれた。
彼女は、自身の少女時代と重ね合わせた小説「赤毛のアン」(原題:「緑の(切妻)屋根の家(Anne of Green Gables)」。出版:1908年)
を書きあげたが、その小説の舞台となった島である。特にキャベンディッシュとその周辺には、小説の中で描写された場所や事物が
いくつも再現されている。物語は、両親を亡くして孤児院で育ち、好奇心旺盛で空想好きの主人公であるアン・シャーリーが、
エドワード島を舞台に成長して行く姿を描く。小説の中でアンが暮らす「アヴォンリー村」のモデルになったのがキャベンディッ
シュである。その周辺には物語で描写された場所が幾つも存在する。(モンゴメリーの略歴についてはここでは省略したい)。
キャベンディッシュにある「赤毛のアン」やモンゴメリのゆかりの場所としては、その物語のモデルになった本物の家を
そのまま使いアンの世界を再現した「グリーン・ゲーブルス」(赤毛のアンの家)である。それは赤毛のアンを愛する人々の聖地的
存在である。その他、「グリーン・ゲーブルス博物館」、モンゴメリの生家(住居跡)や墓地などが興味深い。物語を彷彿とさせる
情景を求めて散策しながら、エドワード島の豊かな自然、まだ見たことのない景色を訪ね歩きたい。
。
さて、エドワード島からハリファックスへは時間のセーブの観点からフライトがベストであろう。見どころとしては、英国の旧
海外海軍基地である「シタデル」、モンゴメリの卒業した「ダルハウジー大学」、「ノヴァ・スコシア自然史博物館」などである。
町の港の埠頭にはカナダで唯一の大型帆船「ブルー・ノーズII世号」が停泊するという。大西洋に面する
ウォーターフロントをじっくり散策したい。
「大西洋海洋博物館」は海洋の歴史に特化する州立博物館であり、一番に訪れたい。「地球の歩き方」によれば、難破船の記録、
海軍の歴史、海賊に関するコレクション、小型ボートなどを展示する。また、「タイタニック号」のギャラリーでは、同号の模型、乗船券、
客室の様子、遺留品などを陳列する。なお、1912年4月14日にハリファックス沖1,130kmの大西洋上で沈没した「タイタニック号」からは、
ハリファックスの「フェアビュー墓地」に200体以上の遺体が搬入されたが、そのうち121遺体が埋葬されたという。時間と
相談しながら訪れたい。
また、ハリファックスから南西に40数kmにあるペギーズ・コープには大きな灯台がある。
そこから海岸沿いに100kmほどドライブしたルーネンバーグには「大西洋漁業博物館(Fisheries Museum of The Atlantic)」がある。
時間が許すかどうか懸念されるが、訪ねてみたい施設である。
「アトランティック・カナダ」への旅のもう一つの目標は、ファンディ湾を舞台にした潮の大スペクタクルである潮汐の海嘯(かいしょう)、
すなわち海水の大逆流である。ファンディ湾の地形形成は、2億年ほど前の超大陸パンゲアの分裂の賜物であるという。
その分裂によって生まれたファンディ湾は南西~北東にほぼ270km伸びる巨大な入り江である。広い間口は奥に
向かって徐々に狭まり、楔のような形状をしている。湾内での干満差は世界一といわれる。湾内での同潮線は湾奥に行くに従って
大きくなり、湾最奥での干満差は何と最大16mにもなる。その潮の落差と地理的形状からして、世界でも類いまれな潮の自然現象・
海嘯が見られる(世界平均の干満差は1メートルほどである)。
ファンディ湾には干満差により膨大な量の海水が出入りする。満潮時には外洋から湾内へ1,150億トン、即ち琵琶湖の4杯分の水量
が流入する。干潮時は同じ量が流出する。6時間ごとにこの海水の出入りが発生する。
海嘯の原動力・起潮力は、太陽・月の引力にある。太陽と月が一直線に並ぶ新月・満月の時期は大潮であり、それらの引力が最大となり、
普段の満ち干よりも多くの海水が湾に出入りする。従って、海嘯は最大の逆流・激波を引き起こすことになる。
湾内への海水の大逆流の発生は、同湾の楔型地形も大いに関係している。湾奥は徐々に狭くなり海嘯の高さが増していく。湾最奥で
海に注ぎ込むシュベナカディ川においては、その逆流はさらにその高さを増すことになる。その現象は圧巻と言う他ない。
ファンディ湾での海嘯・潮の大逆流現象やシュベナカディ川での大逆流・激浪をどこで、いつに、いかなるツアーの参加の下で
鑑賞・体験できるかである。まず、概略図をもって、同湾と周辺の地形などを把握しておきたい。
湾中央北岸の港町セント・ジョン(Saint John)、「Chignecto Bay」という湾奥北側の楔状の入り江、「Minas Basin」という
湾奥南側の楔状の入り江、「Minas Passage」という湾中央北岸とその対岸の小半島との間にある水道、その半島にある「ホールズ
・ハーバー」という小さな漁港、「ファイブ・アイランズ」(Five Islands)という湾奥南側の楔状入り江の北岸に位置する村など。
同アイランズでは、みるみるうちに潮の満ち引き現象を体感できるという(その入り江の海水は岸から4㎞も引き下がり海底が出現する)。
同湾の最奥部に注ぎ出るシュベナカディ川(全長72km)を船外機ゴムボートで河口から遡ることができるという。先ず河口から少し
遡った狭い箇所では高さ3m以上の激浪を体感できる。そのさらに上流では、比重の大きい海水が下層の淡水の下方に潜り、一見普通
の穏やか川となる。だが、その上流で再び逆流が出現するという。
最大の大逆流と激浪が起こるのは、年2回の太陽・地球・月が一直線上に並ぶ大潮の時である。
時間的に見て、一日で同湾周辺のこれらすべての地を周遊し、かつゴムボートで体感することは難しいと思われる。まして、
レンタカーがなければ同湾岸の漁村での潮の満ち干や逆流を間近に観察したりするのはかなり困難であろう。ハリファックスからどんな
内容の日帰りツアーがあるのか、今後情報を掻き集めながら検討したい。現地ではリバーガイドのオフィスなどを訪ねるつもりである。
ハリファックスからバスとフェリーでファンディ湾中央北岸に位置する港町「セント・ジョン」(湾岸で最も大きな地方都市)
に渡るつもりである(ハリファックスから同地への直行バスがあることを期待したい)。その郊外の地に「リバーシング・フォールズ」という所があって、そこを流れる「セント・ジョン川」の
橋のたもとで起こる「満潮時の逆流現象」を見ることができるらしい。「セント・ジョン湾」は世界で最も干満差の激しい湾とされる。
フォールズの「インフォメーション・センター」の入る建物の屋上に設置された展望台から、毎日満潮・干潮時それぞれ2回ずつ起こる
海嘯と引き潮を観察できるという。発生時間帯は毎日異なるので、観光案内所などで確認要である。なお、セント・ジョンには
「ニュー・ブラウンズウィック博物館」があり、帆船模型などの海洋歴史展示室があるところ、是非訪ねてみたい。
さて、最後の訪問地は「リドー運河」である。北米最古の運河で、180年以上前に建設された。首都オタワと、オンタリオ湖に面する
キングストンとを結ぶが、自然の川・湖を巧みに取り込んだ運河であるという。自然のままのリドー川が運河と並行するが、
時に結びつき合流する。その合流点には、川の流れを堰き止め、水深を確保・調整するための堰が設けられ、その堰の脇には
ロック・閘門が設けられている。船は堰でできた高低差をロックを利用して上り下りする。
運河の北側の起点はオタワであるが、その運河入り口には全て手動で開閉する「オタワ・ロック」と呼ばれる8段の水門、いわば
「水の階段」があり、船を25メートル上下させる。そこがオタワ側のスタートポイントである(オタワの小高い丘の上にある
「国会議事堂」のすぐ傍にある)。そして、「オタワ・ロック」から最終的に高低差80mを上り詰め、
その後はオンタリオ湖のキングストンへと下って行く。「水の道」は全長202kmあり、全部で40以上の閘門があり、通航に11時間
ほどかかるとされる。途中、手動の回転橋と水門がある。全長202kmのうち人工的に開削されたのは19㎞だけで、他はリドー川や
湖が利用されている。つまり全長の約90%は自然の川・湖を利用して作られている。キングストンの運河終着点では「フォート・
ヘンリー」と言う名の要塞が出迎えてくれる。なお、キングストンはセント・ロレンス川やカタラキ川の始点に位置する。
運河沿いに進む「リドー歴史街道」はよいドライブコースとなっている。蛇足だが、キングストンには「クイーンズ大学」という、
国連平和維持軍の創設や活動に関する研究で有名であった大学がある。かつて1970年代初めこの法科大学院への留学を希望して
応募したことがあった。最終的には国連の平和維持機能の研究ではなく、国際海洋法の研究分野へ分け入ることになった。
さて、リドー運河を11時間かけてクルージングしたいのはやまやまであるが、その時間的余裕をもてるであろうか。
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