一枚の特選フォト「海 & 船」


One Selected Photo "Oceans & Ships"

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船模型にて「世界の船の歴史」をたどる ~筏・丸木舟から明治丸まで12船~ [名古屋海洋博物館]


  
時代や地域、時と場所ごとに、多種多様なタイプの船が、長い年月をかけて次々と生み出され変遷して来た。船の変遷特徴の一つは、 その推進方式(装置)にあるといえる。例えば、櫓櫂による推進、帆装によるもの、蒸気機関や内燃機関などである。 船型、速力・帆走性能や搭載装備・船の用途なども、時と場所ごとの変遷が見られる。因みに、キャラックという帆装は、史上初めて成し遂げた偉業(新大陸への 大航海、世界周航)をして同タイプの船の存在を際立たせている。

名古屋海洋博物館では、11タイプの船模型を展示しながら、時代と共に発展し主役交代して行った船の変遷史を簡潔で分かりやすく 解説しているところ、概略紹介したい。


● 船の始まり
 船が誕生する以前での水上移動方法としては、丸太などの木片につかまりながら足を動かして移動したのが始まりと言われる。 船であることの条件は、「水に浮かぶ」、「移動できる」、「荷物を積める」ことの3条件を満たしていることである。 何本かの丸太を結び合わせて作られる筏。筏はこの条件を満たす最も簡単な船であり、船の始まりの一つと言える。筏が作られるようになると、 水深が浅い所で棒や棹(さお)を水底に差して進んだと考えられる。

● 丸木舟の出現
 大木を得られるところでは、その幹を刳り抜いた舟、すなわち「刳り舟」(または、カヌー、丸木舟)が出現したと考えられる。 推進のための棒や棹は岸辺などの推進の浅いところでしか用いられなかった。水深が深くなると、棹ではなく、棒の先を平たくした櫂(かい、パドル) にて水を掻いて進んだ。この方法は紀元前3500年のエジプトではすでに用いられていた。しかし、櫂による推進方法は、舷縁の低い筏や川船にしか 使えなかった。その後、櫂は、柄のもつ部分がずっと長くなってオールとなった。船縁にオールをセットして梃(てこ)の原理を利用して漕ぎ進むことができた。

● 帆船の始まり
 紀元前3000年頃のエジプトの船には既に帆が取り付けられていた。この頃の帆は、追い風以外には用いられず、人力推進の補助程度のものであった。フェニキア時代になると、 軍船にはガレー船が用いられたが、商船に帆船が用いられるようになった。それ以降、帆船は櫂やオールと併用されて発展して行き、バイキングの 時代まで続いた。

● 三角帆の採用 ~風上に進めるようになる~
 地中海やインド洋で海上交易が盛んになると、「ラティーン・セール」という縦方向に配置された三角帆をもつ船が出現した。12世紀 末頃には2本マストの帆船も出現した。この三角帆は風上に向かって航行できるのが特徴である。

● キャラック船の誕生 ~大航海時代の始まり~
 11~12世紀の間に帆船はいよいよ一本立ちして帆だけで航行できるものとなった。13世紀になると船体はやや大型となり2本マストが採用される 様になった。徐々に外洋を航行できるようになり、15世紀には3本マストのキャラック船が初めて出現した。 前マストには角型の小型横帆、主マストには角型の大型横帆、後マストには三角形の縦帆を備えた。 コロンブスの旗艦「サンタ・マリア号」他が大西洋の横断に、マゼラン艦隊の「ビクトリア号」が世界周航に成功した。

● 大砲の搭載 ~軍用船と海賊船~
 16世紀になると、帆船はさらに大型化し、4本マストのガレオン船が出現した。ガレオン船は軍用・貿易用に使用された大型船である。普通船では 全長が幅員の2倍であるが、ガレオン船は3倍もあり、細長い船型をしていた。この時代の船は、海上敵対攻撃や海賊の襲撃などに備えて、 軍船・商船ともに大砲を必ず装備していた。

● 戦列艦 ~海軍の主力戦艦~
 17~18世紀初めにかけて、軍船は大砲の数で等級が定められていた。第1級から第4級まであった。第1級戦艦はおよそ100門の大砲を装備した。 その中でも、第1~3級までの戦艦を「戦列艦」という。1805年のナポレオン戦争における「トラファルガーの海戦」で活躍した、英国のネルソン提督 率いる艦隊の旗艦「ヴィクトリー号」などが戦列艦に該当する。

● クリッパーの誕生 ~スピードの時代~
 19世紀中頃には帆船の船体・帆装の進歩は極に達したとも言える。平均15ノット(1ノット=1.852km、時速約28㎞)という驚異的速力で航海する「クリッパー」が出現した。 やがて蒸気機関が発明され、汽船が出現するが、汽船は大量の石炭燃料を必要とし、航海に時間とコストがかかるため、暫くは帆船が活躍した。 1869年にスエズ運河が開通すると、航路の狭い運河は帆走できないため、これを機に汽船へとシフトして行った。

● 機帆船の誕生 ~産業革命と蒸気機関~
 17世紀頃に、水に熱を加えると発生する蒸気を動力とする蒸気機関の研究が盛んになった。1769年にジェームズ・ワットが 「ワットの単動機関」を完成させると、急速に産業の機械化が始まり「産業革命」が起こった。 蒸気機関は船にも取り入れられたが、外洋航海には途中の寄港地に石炭補給基地を設ける必要があるため、しばらくは帆と蒸気機関 を併用した「機帆船」が活躍した。 初期の汽船の推進装置は、陸上で粉ひきなどに用いられる水車のような外車が船尾や両舷に装備され用いられた。

● 鋼鉄船と内燃機関 ~近代から現代へ~
 産業革命が起こり、良質の鉄が製造できるようになると、造船材料に鉄が注目されるようになった。鉄は蒸気機関の振動にも 耐えることができるため、船の大型化が進んだ。また推進装置にスクリュープロペラが発明された。20世紀に入ると、鉄は鋼鉄に、 蒸気機関は内燃機関へと改良されて行った。内燃機関は発動機とも呼ばれ、エンジンのことである。 鉄は熱を加えると、どんな形にも変形できるので複雑な構造をもつ船の部材を製造できるようになった。



11. 「想像模型」としての筏(いかだ)。何本かの丸太を結び合わせて作られた筏。筏も船であると記される。船の条件である 「水に浮かぶ」「移動できる」「荷物を積める」を満たしていることから、筏も船であり、船の始まりの一つと言える。もちろん、 荷物だけでなく人も乗せることができる。
22. 「想像模型」としての丸木舟。大木を刳り抜いて作られる舟。世界中でこのような類いの刳り抜き舟が使われてきたとともに、 現在でも現役で活躍している。日本では数千年以上前に使われた丸木舟が発掘されることも多々見られる。 
33. 紀元前のギリシャの商船。
44. バイキング船。8~11世紀、北欧のバイキングの船。無甲板で、マストは1本、帆走に適さない無風などの 時はオールをもって推進した。外洋航海にも耐えられる構造をもつ。遠くは北大西洋を横断して北米 ニューファンドランド地方にまで到達した記録がある。
55. ローマの商船 中世代(イタリア)/nave mercantile romana
66. ダウ船 Dhow Ship インド洋・アラビア海・ペルシア湾・紅海で活躍する木造船 (現代ではFRP船もある)。太いマストと巨大な三角帆を特徴とする。向かい風でも風上方向へ航行できるが、帆の操作には多くの乗組員を必要 とした。
7 7. 「サンタ・マリア号」(195トン、1492年)。コロンブスが大西洋横断の際に 使用したキャラック船で、前檣に小型の角型の横帆、主檣に角型の横帆、後檣には三角の縦帆を装備している。 コロンブスはキューバ、ハイチなどの島嶼に到達し、西欧人として初めて新世界への扉を開いた。 模型: 1/45 都築博氏
88. 「ゴールデン・ハインド号」(1577年・英国・98トン)。ガレオン船である「ゴールデン・ ハイド号」は、1577年12月にロンドンを出港した、ドレーク率いる艦隊の旗艦であった。彼は南米大陸西岸を探検し、スペインが支配 していた港町を略奪した。その後、北米大陸をその北方域において横断するいわゆる「北西航路」(当時未発見であった)を見い出すつもりであった。 南米大陸南端部のマゼラン海峡の対極ともいえる「北西航路」を開拓することは果たせなかった。だがしかし、太平洋横断航海の末、世界周回を行ない、 1580年9月に英国プリモス港に帰還した。英国船としては初めての世界一周であり、マゼランに次ぐ史上二番目の世界周回者となった。 現在、同号の復元船がロンドンのタワー・ブリッジ近傍に係留され一般公開されている。
主要目: 全長21.3m、幅5.8m、深さ2.7m、排水量約150トン積み、帆装3本マスト、18砲門装備、 乗員80~85人。
99. 「ヴィクトリー号」(1765年・英国・2,162トン)。 102砲門を装備する戦列艦。ナポレオン戦争における最大の海戦であった「トラファルガー海戦」(1805年10月)において旗艦を務めた。 ネルソン提督の指揮の下でスペイン・フランス連合艦隊に勝利した。同艦は現在も英国ポーツマスの海軍基地に永久保存されている。模型1/100 杉浦孝三氏。
1010. 「カティ・サーク号」(1797年・英国・2,200トン)。 「クリッパー」と呼ばれ、帆船の発展段階において究極の進化を体現し、帆船時代のアンカーを務めた船種 である。速い時は12~14ノット(1ノット=1.852km)で帆走した。最初は中国茶、後に羊毛をオーストラリアからロンドンへ 輸送した。現在は、英国グリニッジの国立海洋博物館の近くの特設ドックに保存され、船舶博物館として一般公開されている (かつて火災に見舞われ激しく損傷したが、その後完全修復され公開されている)。1/78伊藤芳次氏。
11 黒船「サスケハナ号」Susquehanna(1850年・米国・2,450トン)。 帆と蒸気機関を併用する機帆船。 日本に開国通商を求めて浦賀に1853年来航したペリー率いる黒船艦隊の旗艦である。ペリーは米国大統領の親書を携え、開国を迫った。翌1854年に 日米和親条約が締結された。縮尺1/60。
1211. 「明治丸」(1874年・日本・1,028トン)。「明治丸」は、 明治政府が英国グラスゴーのネピア造船所に燈台巡回業務に資するために発注し、1875年(明治7年)に竣工した鉄船である。 他方で、ロイヤルシップとしての役割をも有していた。1877年(明治9年)に明治天皇が巡幸した折の帰途、青森から函館経由で横浜まで乗船、 その帰着日の7月20日を記念して「海の記念日」(現在の「海の日」)が制定された。1/96 疋田晶一。


[撮影年月日:2020.9.23/撮影場所: 名古屋海洋博物館][拡大画像: x28876.jpg:「船の歴史」のほぼ全景画像]


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